とぶかさなを “伝える” メッセージ 〜汐〜 | 魚や居酒屋 とぶさかな 下北沢

下北沢 居酒屋 とぶさかな 海鮮料理

魚とまじめにお付き合い

下北沢 居酒屋 とぶさかな アクセスMAP

下北沢 居酒屋 カウンター/テーブル席 下北沢 居酒屋 とぶさかなの「はなれ」 下北沢 居酒屋 とぶさかな 三年間の魚日記 下北沢 居酒屋 とぶさかな 伝える 下北沢 居酒屋 とぶさかな 歴史

下北沢 居酒屋 とぶさかな

とぶさかな 下北沢の魚や居酒屋

下北沢 居酒屋 とぶさかな

大事なことは『変わらないこと』、『変わっていくこと』。

  • 初恋サワーはじめました
  • 自家製サングリアつくりはじめました
  • グラスワインはじめました
  • 貝刺盛りはじめました
お知らせ

開店から20年、とぶさかなの日替りメニューは、毎日手書きしております。
近年一生懸命書いたメニューも「見辛い」「読めない」などのご意見をいただく事が多くなりました。
そして、お店が大きくなるにつれて枚数が足りない状態が出てきていました。
そこでこれからは、各お席に [本日のオススメ メニュー デジタル版] を配布いたしました。
もちろん、手書きメニューもご用意しております。
ご来店の際は [手書きメニュー] でご説明させていただき、その後は、ゆっくりと [デジタル版] でご検討ください。
尚、野菜のメニューは当分の間 [デジタル版] のみの記載とさせていただきます。
ご理解の程よろしくお願い致します。

とぶさかな 店主

火曜日限定!
毎週火曜日は琥珀エビスの日
はなれでしか飲めない琥珀エビス
生ビールと同じ480円でご提供!

とぶかさなを “伝える” メッセージ 〜汐〜

2010年12月31日(金)


下北沢の魚や居酒屋とぶさかな|インタビュー

今回は、とぶさかなの汐(しお)についてのインタビュー。
なぜ「塩」ではなく「汐」なのか!?という素朴な疑問はもちろん、たかが塩、されど汐がとぶさかなでどのように使われているかを探ります。
なお、以下のインタビュー文字起こしでは混乱を避けるため、「汐」の字の意味に迫った部分、塩と汐を区別している部分以外では基本的に「塩」の字を使用しています。
また今回このページに挿入している写真は全て、本ホームページの「サイト内検索」機能(右サイドバー上部またはページ最下部にあります!)を使ってキーワード「汐」で検索した結果から 新着情報 ページに掲載されているものだけを抜粋して使用しています。

とぶさかな の汐1
 佐賀県産の里芋「福頭(ふくがしら)」

「汐」の字を使う

-------私個人の印象としてですが、最近ラーメン屋さんなどでも「うちは塩が自慢」みたいなところを良く見掛けるようになりました。とぶさかなでは当初から塩にはこだわっていらっしゃったのでしょうか?

元々塩にこだわっていたというわけではありません。独立してから意識するようになりました。独立の流れもあって最初の時は正直あまり意識してなかったんですね。
例えば、最初の一軒目のときは焼き魚は現在のような炭火焼ではなくてガスで焼いていましたし、塩以外にもこだわって行かなければいけないものが多かったというか。

とぶさかな の汐3
  千葉県竹岡産の高級魚「ノドグロ」

で、塩を意識し出したのは6品ぐらいあったお刺身を食べ分けてもらう上で、醤油、わさび醤油、生姜、ポン酢ぐらいまではそれまでの経験で出してたんですね。この魚にはこれが適しているからと。
しかし、基本的に自分がお魚を好きでありながらも、刺身を目いっぱい食べたいタイプではなかったような気がするんです。
家が魚屋だったのでお刺身にはもう子供のころから馴染んでて、ちょこっとあるお刺身をつまむぐらいの感じだったんで。
友達なんかはお刺身でご飯が食べられる、お刺身をおかずにできるみたいなタイプが何人かいたりしたんですが、自分はと言うとお刺身をおかずで食べた記憶があまりなかった。
そして自分がお刺身を出す側に回った時に、たくさんのお刺身を出していながら自分で食べるとなると醤油だけで満足して食べているかというと、そんな気はしてなかったんですよね。

とぶさかな の汐2
         「八角」

そんな中で目先を変えて食べるということを考えてきたんです。塩レモンとか、レモン汁につけて塩を乗せるとか。
その塩が岩塩であったり良い塩であったりすることによって、また違った甘みが出たりするということがわかってきた。
当初はボリビア産のローズソルトという岩塩を使っていました。

-------聞いたことがあります。赤っぽい色がついてるんですよね。

とぶさかな の汐4
   千葉県竹岡産「太刀魚(タチウオ)」

そうです。オレンジ色の岩塩で、固まって売られているものを買ってきて削ったりする。そうすると荒目があったりとかのバリエーションもできる。それを市場で仕入れることになって、使う切っ掛けになったんですね。

-------市場で出会ったんですね。

そうですね。
今はちょっと少なくなったんですけど塩屋さんというのがあるんですね。塩もお酒と一緒に免許があったじゃないですか。だから塩屋さんも当初は普通の塩を売ってればそれだけでもうしっかり商売になってたんですけど、だんだんどこでも塩が売れることになってきた。

とぶさかな の汐5
       函館産「本マス」

そこで塩屋さんが差別化を図るためにとそういったブランド力のあるものを扱うようになってきて、ローズソルトみたいなものが出始めたころだったんですね。

-------ちなみに、そういった一般的ではない塩のお値段は、やはり高いのでしょうか?

はい、もう全然高いです!(笑)値段の感覚がちょっと違いますね。今までは30Kg単位などで買ってたものがそうはいかなくなります。

とぶさかな の汐6
       根室産「キンキ」

だから僕らも、今までとは違う塩を扱っているという意味でメニューで「汐」と書いて、自分たちの中でも区切りをつけたんですね。「汐」を使った焼き魚は「汐焼き」と書くと。
途中からですけどそういう意識が出てきたんですね。そうすると自分たちでも塩に目をつけるというのがちょっとしたブームになってきて、どこかに行ったときにそこが塩の産地だったりすると気にしたりとか。「ここの塩は甘いね」というふうになっていって。
それから引っ越すことになって、炭を使うようになって、炭で焼き魚もやろうとなったときにガスが炭に変わって良くなった。
とすると次はもう必然的に塩になるなんですね。そして、更に素材の良さを活かすにはどうするかと考えていく。
で、最初はよくある伯方の塩を使ったりしていましたが、そうこうしているうちに瀬戸内の家島という島で作っている塩が市場に出てきたんですね。
最初はちょっと混じり物があったりもしたんですけど、その塩が良くて焼き魚でも使うようになったんです。

-------単に偶然良いものを見つけたという感じでも、そもそも塩に対してアンテナを張り始めたからこそ出会えたというわけですね。

家島の天然塩
       「家島の天然塩」

しかし当初は炭で焼くことや良い塩を使うことを表に出すことはなんかちょっと小っ恥ずかしくて、よくある「炭火焼」とか「天然塩使用」とかいうふうに謳(うた)うのはやめよう、こんなのはもう当たり前じゃないか、という姿勢で行こうと。
お客さんが「この店の魚はどうして旨いのかな?」となったときに、「ああ炭じゃないか?」「いい塩使ってるんだ」「魚の鮮度もいいんだ」っていう当たり前のものにしようと。
謳わずに食べてもらえばわかるよっていうレベルに持っていきたくて、あまり表面に「○○の塩を使用しています」とか「炭で焼いています」とかいうのは謳わないで10年近くやってたんですね。

-------隠すわけでもないが大きくオモテにも出さない、微妙なところですね。

とぶさかな の汐7
         「ヤリイカ」

そうしていると、家島で塩を作られている人が病気になられたとかでその塩がなくなってしまって、次はいつ来るかわからないような状況になったり、あるいは無事生産されるようになっても今度は天気が悪いから滞っているというように安定性がなかったんですね。
そういう時には伯方の塩に戻ったり、また何か違う塩にしてたんですけど、今また家島の塩の別のルートを見つけたので安定して入るようになっています。

とぶさかな の汐8
    愛知県産「平貝(たいらがい)」

それで自分たちの中でも塩というものがある程度見出されてきて、塩にこだわる・注意するというのが定着してくると、塩屋さんとのやり取りの中で今は塩レモンで出してると言うと、「次は大河さんこの塩でどうですか」というように勧めてくれるようになる。
またあるとき、奄美大島(鹿児島県)のとても甘さを感じる塩をお土産でもらったんですね。で、その塩をちょっと送ってもらって使ってみたり。自分の「盛り上がり」で塩を変えるという感じになってきたんですね。
そういった流れから、塩というものに少しアクセントをつけるようになってきて、今に至るという感じです。
今はそれを当たり前のような感じで「汐でどうぞ」とやっていて、食べ方の方法として塩を提供させていただいているという感じです。

辛味・苦味


とぶさかな の汐9
      三重県伊勢産「カマス」

そして、そこからまた素材に合った「辛味」の要素に目を付けるようになってきて、辛子、わさび、ゆず胡椒と広がってきています。
辛味というのもセンスだと思うんですね。やっぱりどんどん大人になっていくことでどの辛味を持ってくるか、どの素材にどの辛味をつけるかって、その人のセンスになるというふうに思うようになったんですよ。これにはこの辛味っていうオーソドックスなものがあって、それによってその素材が引き立ったり締まったりするので、刺身でもこれには柚子胡椒を付けてくださいというように添える辛味をこちらが提供する。

とぶさかな の汐10
         「鰆(さわら)」

-------子供のうちは「美味しい」=「甘い」みたいなところがあって、そのうち塩の甘味がわかってくるみたいなのってありますよね。塩や辛子の旨さは、味に開花する瞬間というか、更に上の味の探求をし始める年齢になってきてわかる。素人の私からするとお客さんのそういった要求にマッチさせていくというのは実に難題だと思うのですが。

そうですね。だから30代の人たちとかが、やっといろんなものを食べだして美味しいものがわかりだしたときに、いろんな店に行って確かに美味しいものがあるんだけど、それに対して付属のものが何か物足りないっていうお店は確かにあると思うんですね。色んなものがパッて出てくるんだけれども、塩であったり醤油であったりといったものがちょっと物足りないというように。お刺身もたくさん種類が来るんだけど、醤油皿一個ポンと出てきて終わりみたいなことが結構あったりとか。

とぶさかな の汐11
     三重県産「鶏魚(イサキ)」

その発展形で「苦味」の美味しさっていうものも出てくると思うんですね。
辛味から始まって苦味の美味しさが判ってくる、老化することによって苦味が出てくる、苦味の旨さがわかってくるということを聞いたことがあって。苦味には目覚めの作用があるとかね。
苦味は人間を覚醒させるもので、春にはそういう苦味の品物が出てくるんですよ。山菜なども苦いものが出てくる。
コーヒーにしろ苦いもので目を覚ます、身体を呼び起こすっていう作用があるっていうのと同じように。 苦味っていうのもまた面白い味覚のものだと思うんです。

とぶさかな の汐12
    神津島産の天然「カンパチ」

やっぱりずっと食べている上で、実はそういうもの、お酒を飲みながら何か刺激的なものが欲しかったり、キレを良くしたりっていうものが欲しいという発想が出てくると思うんですね。そしてそれをお店側がベストな形で提供できればと。

-------手さぐりだけではなく実際にお客さんからのフィードバックというのか、意見を聞きたいところですね。

とぶさかな の汐13
 根室産「キング・サーモン」

そう。それまで自分たちが知らなかったことをお客さんに教えてもらうこともあるんですよね。 ちょっと話は逸れるんですけど、うちの親父みたいなある一定の年齢層はアジフライにはもうウスターソースがベストなんだっていうのがあったりするんですよね。
そこにウスターソースが出てきたりするお店って、なんか結構自分の中でカッコイイな、やるなぁ、みたいな。そういったお店は「そういう店に持っていっている」わけですよね。
それが若い人だと「マヨネーズください」みたいなことから発展していく、食べ物に付属するものが何かを自分なりに見つけていくという「センス」だと思うんですね。それを提供することが僕らの仕事でもある。

とぶさかな の汐14
 松輪産「エボダイ」

そういったヒントを与えてくれるのが寿司屋さんであったりするわけです。若い人がやっている寿司屋さんだったり。
僕らはオーソドックスな組み合わせというものを大切にするんだけど、それを一生懸命やったあとに、ちょっと変わったものを付け加えられればいいと思う。

-------いきなり変な、突拍子もないもので注目を集めるのではなくて。

とぶさかな の汐15
 式根島産「タカベ」

そうすると単なる創作料理の混ぜ混ぜになってしまうんですけど、やっぱりオーソドックスを詰めていくと、ある程度になった時に変わったものも入れていくってことが大切になってくると思うんですね。
そういったときにヒントを与えてくれるのが、創作料理じゃなくて、イタリアンや中華の突き詰めたものにヒントがあって、それをじゃあちょっと入れてみようみたいなことは「良い現象」を起こすんです。
例えば若い子が賄で何かを作るときに「何でこの食材とこれを組み合わせたの?」と聞くと、「今日スーパーで安かった特売のものを合わせました」みたいなものだと、なかなかうまいこといかない。
やっぱり季節であったり、その地方・土地独特のものであったり、旬のものが合わさって、昔の人が言っていることや理に適ったものが、後から聞くと科学的根拠があったりということがあるんですよね。
そういうものがないといけない。そういうものは一生懸命やらないといけない。そういうものは何かって追及していかなきゃいけないと思うんです。

とぶさかな の汐16
 釧路産「時さけ」

そういう道みたいなものが自分たちの中で準備できていれば、そのあとには、あっ!と思うものが次々と見つかってくると思うんです。だからベストなものをなるべく追求していく。
だから寿司屋さんなんかに行くと季節のベストのものが小さな一個のネタに凝縮されていたりするんですね。
寿司屋さんでは塩とレモンなんかはもっと昔からあって、イカなんかでも塩レモンで食べさせてくれたりする。他にも山椒とかがごく自然にパッと出てくるわけですよね。
そういったことを思わせてくれる場所として、いまだに寿司屋さんにはアイデアをもらいに行くんです。

とぶさかな の汐17
 銚子産「大羽イワシ」

それに寿司屋さんでお刺身が出てくるとき一個一個「はいこれは煮切り醤油で」「はいこれは塩レモンで」と一貫一貫その種類ごとに何かを提供してくれるじゃないですか。その食材の産地・地方によって、昆布の合わせ方とかがまた違っていたりする。
そういう刺身を提供したいと思ってるんですよ。
「酢味噌で」「次はこれで」とか、そういう面白味を出したい。刺身で「はい醤油ですよ」じゃなくて、これは肝ポン酢でどうぞとか。
そういうものが好きな人にも次々と、そうでもない人でも飽きずに食べられる要素になるものを見つけ出すというのが、ずっとテーマだったと思うんです。

とぶさかな の汐18
 「水ダコ」

そうすると色んなものがあって、今まではただ昆布〆(コブジメ)にしてたものを竜皮昆布というちょっと柔らかい味のある昆布で包んで、それをただ挟むだけなんですけどね。
そういうのをお寿司屋さんで食べさせてもらって「あ、これだ!」と思うと、なおかつ全部が全部それじゃつまらないんで「竜日昆布で巻いて食べてください」という要望に応えられるようにするとか、昆布〆+昆布で出すとか、そういうことができてくるようになったんですね。

とぶさかな の汐19
 愛知県豊浜産「小ヤリイカ」

そういうのはそのときのお店の盛り上がりが、結局は自分自身を盛り上げてくれるんで相乗効果になるというか。
「汐」も最初はそういう盛り上がるための、自分が飽きずに提供していくためのアイデアとして考えたんです。
そうすると、今度は塩を出したいがためにそれに合った食材を選ぶという逆転もあったりするわけですね。この塩を使いたいからこれでどう?というように。

-------そういった新しいものの情報を仕入れるのって、やっぱり自分で市場に行っての情報収集が欠かせない感じなのでしょうか?

とぶさかな の汐20
 山口県萩産「サワラ」

やっぱり食べることですね。だから年間に一回か二回は仲間の人間と地方に行く機会を作ってるんですね。行楽旅行じゃないのでなるべく飲食店の良い所と言われている所に行って、有名なお寿司屋さんであったり、居酒屋であったりというところを勉強会と称してめちゃくちゃ巡ります。一軒目か二軒目ぐらいまでですけどね(笑)。後は飲んだくれになってるだけなんですけど、でも必ずヒントがあるんです。
でも東京で歩くより、地方の方が意識が高まるっていうのもあるんですけど、地方の有名な食材・名産というのはやっぱり多いじゃないですか。そうするとみんながそれをやってるわけですよ。さっき言ったような理屈に合うものをやってたり、だんだん外れてっちゃってるものもあったりと。名産だからと言って無理矢理入っちゃってるものもありはするんだけれど、そういうところに行くとその素材そのものが重視されているんで、ヒントが見つけすいんですよね。
例えば同じ野菜の食材を使っていても東京だとその一品でドン!とやる店が少なくて、「これのナントカのナントカ風」になっちゃうんですね。折角いい素材を持ってきたのにイタリアンでもなんでもいろいろ組み合わせることによってそうなっちゃう。

-------売るためにはそうするしかない…。既存の既に売れているものと組み合わせてより売ろうとするからどうしてもそうなってしまう。でも名産地に行くと、その中でも当然競争はしているから、素材のいいところを出そうとしているのが見やすい…ということでしょうか。

とぶさかな の汐21
 北海道網走産の子持ち「ハタハタ」

だからパッと見つけやすいんですね。あこれだ!となるチャンスが増えます。
だから地方へ行くとヒントが転がってるんで、何件か行ってると食材がダブるんです。富山に行ったらあっちの店でもこっちの店でも白エビのナントカとか、ダブることによって答えが見えてくるというか。

-------私なんかは東京にいれば世界中のものが食べられるのに、と思いますけどね(笑)。

でも地方に行くとアクセントがどこについてるのかというのが見えるから、戻ってきたときには素材に対して「より大切にしてるものは何?」という見方ができるようになります。鮮度なのか、スピード感なのか、何がその素材に対して大切なのかということを。

とぶさかな の汐22
 珍しい「ボウズギンポ」

確かに東京では大抵のものが揃うんだけども、どうしても地元じゃなきゃかなわないところがあるんですね。航空便などの輸送手段があるとは言え、時間的な要素が絡んできます。
富山のエビなんかはその日の夜に頭が黒くなってしまうものがあるんですね。だからどうしてもそういうエビは東京の市場には出てこない。そういうものを追いかけるのはなかなか難しい。でもどこか頭の片隅にそういった知識があれば、市場でそれに出会った時に、使う切っ掛けになるんですよね。
そしていつの間にか、流通が良くなったり処理の仕方が良くなってより使えることになったりする。
でもその注意点というのは何なのかというのはちゃんと知っておかなきゃいけないと思うんですね。
例えばウニなんかだと、北海道とか三陸といった北の方のものをイメージしていたものが瀬戸内や九州の方で捕れるウニがあるというのを知って、市場で聞いても「そんなの流通にないよ」みたいに言われてたのが、いつの間にか淡路島のウニなんかが出てくるわけでね。その時に、あこれはこういうものだ、価値があるんだ、これは美味しいよ、さっぱりしてるんだよ、ということを知っているかどうか。

とぶさかな の汐23
 長崎県産「エボダイ」

市場では大量に入って「価値を無視してとりあえず売る」みたいな時があるんですよね、価値がこっち(東京)ではまだ見出せていないと。
そういう切っ掛けのようなことは何回かありました。ウニが本来表を向いているのが裏を向いて薄箱に入れてあったりとか、そういうものを見た時にこれをやろう!という後押しになる。

-------地方での「巡り」がヒントになり、東京の市場での「目線」が使う切っ掛けになるんですね。

僕は漁村に行って仕入れのルートを開拓しようとかいう考えは全くないので、そういうお話をもらうこともあるんですけど、地方巡りっていうのはヒントになるんで「一お客さん」の視点で行って、自分たちが出すことのできる方法を考えるっていうのに過ぎないんです。
どっかの漁村に行ってきましたとかそういうのではないんです。いわゆる漁師町の旅館に行って食べるんじゃなくて、実際にはお店でどう売られてるのかっていうことがわかる街に行くっていうことです。
だから僕らと同じ共通点を持つ飲食街や繁華街でどう出されているか、仕入れなども「見る」ために、そういう所に行くようにしてるんです。
それが刺激であって、盛り上がりだと思っているので、全てがパクリじゃないですけど僕らは著作権のない業界と言ってるんで(笑)、真似て、それをより良い素材にするのか、より良い状態にするのか、もう1アクセント付けるのかが勝負なんです。そういったものを自分たちの手によって紹介して出す。

とぶさかな の汐24
 函館産「メバル」

キンキの湯煮というものがあって、北海道でほんの少しの塩と昆布だけでゆっくり炊いて豚骨スープのようにする漁師料理を食べた時に、より良いキンキを使って東京ならではの、逆に良いものが来ていると、それをやってみようと。

-------なるほど、塩と昆布はその地方ならではのものだけど、キンキは東京でならもっと良いものがある、と。それを合体させてみるという発想ですね。

そうすると地方のものにも勝負できる感覚になるんじゃないかなっていうのをよく思うんですよね。こっちでできるそこに負けないものは何か。
だから一番苦手なのは、「どこどこで食べたものが旨いよね」ってずっと話してるお客さんなんですね。それはもう飽く迄も「土地」には勝てない。だからよく思うのは「あなたの中で二番目に美味しいものを目指します」ぐらいの感覚なんですよ。

とぶさかな の汐25
 北海道余市産「ニシン」

「小さいときに」「地元で」「ウニをね、山盛り食べさせてもらったんだよ」なんて言われると、もう思い出と土地の要素が大きすぎる。お金を出して商売をしている上ではそれには絶対勝て無いわけですよね(笑)。
だけどその感覚に近いものであったり、そういうものでありたいと思うので、これが一番だとは思ってはないんです。
思い出に勝るものもない、でもその共通項は一緒だと思うんですよね。ウニがドカッと食べたいなとか。そういう時にそれに近い状態のウニだったり、殻つきのウニがきたりというのは、それに近いものだから流通もスピードや品質が向上してきていたりするんで、自分たちが目指していることに合致してきたなって思うんですね。
ちょっと塩から離れましたが、それが都会における食べ方だと思うんですね。そこで食べた方法を足すみたいなことが。

とぶさかな の汐26
 「目光(めひかり)」

このあいだもワタリガニが市場で売っていました。ワタリガニってとってもおいしいカニで、だけど何年か前に冷凍の切ったワタリガニが中国や韓国から出てて、鍋材として当たり前のように魚屋さんの軒先で売られているわけですね。それはもうホントに食べるとボソボソしてて出汁しか出ないような。それがもうワタリガニのイメージになってしまって、僕ら世代からちょっと上ぐらいの人はみんなワタリガニ=ボソボソみたいなふうに思ってる傾向があって、せっかくのワタリガニに価値が無いわけですよね。
だけど美味しいので値は結構するものであったりするので、僕はそれを四国で教えてもらって、四国の秋のお祭りのころがシーズンでキロ5000円以上するものも出てきたりして、北にはズワイ、松葉にも勝るとも劣らないカニなんです。でも市場でワタリガニを買うことはあんまりしなかったんですね。その値以上に価値を皆さん持っていないので売れないわけです。
それでこのあいだ自分が食べたくて買ってスタッフもそれを買って帰って、こんなにおいしいのかと(笑)。で、その時の食べ方が、普通カニは塩ゆでにするんだけど、四国では塩の代わりに醤油にするんだよ、と。味を付けるというより味を逃さないという感じだと思うんですよね。生きてる間に活け締めにすると脚が切れないよとか。カニはゆでると自分の足を落としちゃうんですよ。そうやって防ぐんですよっていうようなこと、地方で聞いたことをプラスにすると、お客様にプラスの話ができるっていうことがひとつのサービスにつながると思うんです。
地方に行った時の食べ方であったり、ちょっとした食の文化みたいなものを知るということが、実際に向こうに行く理由になるんですよね。それを薀蓄ではなくて多少でも知ることによって食材の価値が出てくるんで、一個一個の商品が活きてくるというかストーリー性が出てくるんで、ただ品揃えではなく商品として価値がある力強いラインナップが揃ってくるんです。それが魅力のある商品へとつながっていきます。

とぶさかな の汐27
 静岡県伊東産「鰆(サワラ)」

だからよそ様のお店と見比べて確かに同じようなものが並んでいるかもしれないけれども、ストーリー性があればあるほど素材が活きるから、そういった作業をする。それが「熱」だと思うんです。
僕には熱があるんだけれども、スタッフがそれをちゃんと受け止めてくれないと、つまり自分のものとして消化してくれないと他のお店の人と立場は変わらないから伝わらなくなる。
だから、せっかく任せたのに単にお客さんに商品に出す、仕入れたものでもなんでもなくて「店に運ばれてきた素材」を出すって意識になってしまうことは一番怖いことだから、自分の熱にする方法を教えてるに過ぎないんだと。

とぶさかな の汐28
 大船渡産「大目マス」

だから自分で食べることも自分で感動することもそうだし、実際に店に行くことも自分でお金を払って食べることも、それを自分の熱に変える方法なんだよっていうことをスタッフには伝えたい。
「この商品を使ったからこうだ」じゃなくて、そこに行き着くところまでの話が大切なんです。元々はみんな同じ条件を持っていて、そういったちょっとしたことをするかしないかだけなんです。
そうすると多分、違う商品でもハッと見出すものが出てくると思うんですね。自分の家ではこういうふうにして食べてましたみたいなことが出てくれば、それはもうそれだけで商品としていいんだよ、と。家ではこんなふうにして味噌つけて食べてましたとか、母親がこういうふうにしてくれたものが僕は好物でしたとか、そういったことを伝えることがこれからの「伝える」ってことだと思うんですね。だからどうやって見つけてきたかというのが共通項・みんなの術として、共有されるべきだと思っています。
飲食店に行った時の見つけどころって多分あると思うんですよね。感動したり、何か感じたものを受け入れて消化し、自分なりに表現するっていう作業が必要です。

-------例えば、うちの店はコレ!と決めるんじゃなくて、ひょっこり入ってきた新人のバイト君がこれ美味しいんですよって紹介してくれれば、よしやってみるか、と。

とぶさかな の汐29
 千葉県竹岡産「赤ムツ」

そう。ホントそんな感じです。
お酒でも何でもそうだと思うんですよね。これが父親が昔から飲んでた酒なんです、みたいなことが大切だと思うんです。
うちはオープンした当初なんかは愛知県の蓬莱泉(ほうらいせん)というお酒を扱ってたんです。うちの母親方の方に仏法僧で言うところの蓬莱山という山があって、皆がそこに参りに来る参道みたいな、山方向に向かうための道があるんです。で、そこの途中にお茶を飲んだりお酒を飲んだりして休憩するためのお店があって、そこの酒屋さんではその辺の土地の人達が好んで呑む蓬莱泉が出されている。言わば、土地の人たちにとって小さい頃から身近にあったお酒で、それを「爺さんの愛した酒」みたいな感じで最初のころは言ったりしていまして、そういう話があるっていうことが僕らの商売ではとっても大切なことなんじゃないかなぁ、と思うんです。
そんなのいくらでも出てくるわけですよね。
別の話では、ただのゲソ茹でなんだけれどもこんなふうに食べたゲソが旨かったというのがあります。魚屋で年末・お正月用にイカをたくさん剥いて冷凍にするんですね。大量に仕入れてきて。それを剥いて冷凍にすると大量のゲソが出るわけです。それの何杯かをバッと塩茹でにして、みんながそれを頬張っておやつ代わりにする。それを食べさせてもらった時の思い出、「旨かった!」というその感じが出したいんだよってみんなに言うんです。

とぶさかな の汐30
 鹿児島産「太刀魚(タチウオ)」

だからその「茹で上げをかじった感じなんだよ!」みたいなのが自分の中にあるから、「こんなに切りすぎちゃダメ」「細かく切りすぎないで」と言うわけです。商品として見た場合の「品のいい茹で上げ」ではなくて、寒い日に手もかじかんでいて、だけどお腹がすいてて、そして食べたあのパクッとかじった感じのイメージを大切にしたい。
そうなるとやはりゲソ一個にしても商品として成り立つんですよね。それには醤油もつけないし、塩を盛ってバッと食べるだけなんです。
そういう思い出や思い入れは多分みんなあると思うんですよね。それを商品にしたい。お肉屋さんのコロッケをパクッとおやつに食べるような感覚のアジフライであったり。そういうおやつでパッと食べるような感覚があるから一枚でOKだ、となるわけです。

とぶさかな の汐31
 「大アジ」

油紙みたいな魚を包む紙で包んで「はい、どうぞ」みたいなのが僕らの感覚なんだよということが話的にわかればそれを続けていけるんだけれども、スタッフがそれを知らなければご丁寧に天ぷらの様なキレイな紙で出そうとするような…。
そんなんじゃないんだよこの感覚は!というところがわかると面白味に変わってくる。それで僕らから上の世代になってくるとそんなふうに食べたねってことになってくるんですよ。そこをくっつけていく面白さっていう。

-------思い出、思い入れ、面白さ、試行錯誤の過程を知識として共有していくっていう。

とぶさかな の汐32
 「イサキ」 (小)島根産 (大)長崎産

そうですよねぇ。若い世代はまた次の感覚で僕らと違う思い出っていうようになってくると思うんで、その感覚を表現するということの意味がわかってないとそこにはたどり着かないと思うんで。
その時代時代の思い出はみんなあると思うからそれを出す面白味。それを「あぁ、面白いね」って言える自分じゃないと。前の世代の感覚を少し取り入れたりして発展していかないと、やっぱり上の世代は満足しないんです、なかなかね。
やってる子たちは、例えば25歳だったらプラス10歳ぐらいの食の感覚を持たないと上の人を満足させられないから、その人たちが行く背伸びしたようなお店にも行かなきゃいけないし、そういう感覚を持たないとお店の中のいいものにはなっていかない。そのへんが課題ですね。

-------ちなみに塩はひとつ決まったらしばらくそれに固定という感じなんでしょうか?

とぶさかな の汐33
 静岡県相良産「ノドグロ」

今は焼き魚においてはそうですね。添えていくものはそれに伴って旬のものを、と。今は岩塩は使ってないんですけども、食材食材において分けるようにしていますね。

-------具体的に、「汐」を使っている料理は?
そして、今回は塩から旨味・辛味・苦味といった味覚の話が出ましたが、素材の味覚を引き立たせる名脇役として「汐」以外にも気を使われているものがあったらお聞かせください。

とぶさかな の汐34
 伊豆神津島産「カンパチ」

汐を使っているのは焼き魚、タコ、貝のお刺身などですね。
野菜でも焼き魚に使う汐を添えたりしますが、つい汐のほうに偏ってしまうので、食べ飽きる…。もう少し強い味のものが欲しいとなると味噌だったり、味噌とマヨネーズを混ぜてくださいってことになったりすることはありますね。アスパラなんかは逆に味噌とマヨネーズを混ぜてアクセントにした方が良かったりするんで、トマトにしろ何にしろ野菜はどうしても「素材」なので多くなりますよね。
これからは味噌などにも力を入れたいと思っています。谷中生姜(やなかしょうが)には田舎味噌で、お味噌汁には愛知県の赤味噌といったように使い分けています。
お味噌汁は当初赤味噌だけでやったら、ちょっと好き嫌いがあったんで田舎味噌とブレンドさせて、お店の味噌汁は赤味噌ベースの合わせ味噌にしてますね。
そして、醤油は難しいですね。西の方の濃い溜まり醤油を一時やったんですけど、やっぱり食べ慣れている醤油が一番だなっていう感じなんですね。醤油に関しては、あまり凝ったものより普通に食べ慣れている醤油の方がいいんじゃないかっていうのは、ずっとやってる上でお店に置いておくには「普通がいい」んじゃないかっていう感じがするんですね。みんなある程度普通のラインを持ってるんで、ちょっと凝ったものになると、そっちの方に意識が行っちゃうのか、なかなか良くなかったですね。

とぶさかな の汐35
 式根島産「イサキ」

かえって普通の醤油を出したら「美味しい醤油ですね」なんて言われることがあったりすることが結構何度かあったんですね。それって何なんだろうって考えると、あまり出しゃばらないこと。そういう意味では醤油というものは調味料として完成している、持ち味が良く表現されるんだろうなっていう感じはしますね。
お酒でもそうなんですけど、感覚として「わぁ美味しい」「これだけを飲んでて美味しいって」いうお酒と、他を活かすものっていうことがあるから、醤油もうちの立場で行くとあまり出しゃばんない方がいいんじゃないかなというところですね。

-------「汐」だけをテーマにするとすぐに話が終わってしまうのではないかという事前の危惧をよそに! みっちりと1時間のインタビューとなりました。
あらゆる食材の味覚を引き立たせる調味料。しかし大河社長の口からは「調味料」という言葉は出ませんでした。あくまで個人の感想ですが、調味料と言ってしまうと科学的な感じがするというか、何か味気ない気がします。そういったことも踏まえた上での「汐」なのかなと思いました。
「たかが塩」とは言え、その使い方から始まって今度はそれに合った食材を探す・見つけるという作業が重要であることが垣間見えました。そしてそれは、素材をより良く提供するためのヒントを拾うためのアンテナを持った人材育成という一貫したテーマにもつながるのです。「されど汐」。


JUGEMテーマ:とぶさかな

下北沢の魚や居酒屋 とぶさかな

お知らせ

オーダー組み合わせ料金例を掲載:
「こんな感じのオーダー組み合わせでこれぐらいのお値段」という例をご紹介!
とぶさかな定番メニューとオーダー料金例

焼物ラストオーダー時間改定:
これまで22:30だったものが他の食物と同じ23:00になりました。
とぶさかなの使い方→こちら

定番メニュー

下北沢 居酒屋 とぶさかな

居酒屋 とぶさかな

居酒屋 とぶさかな

居酒屋 とぶさかな

下北沢の魚や居酒屋とぶさかな

下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月10日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月11日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月12日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月13日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月14日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月15日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月16日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月17日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月18日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月19日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月20日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月21日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月22日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月23日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月24日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月25日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月26日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月27日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月28日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月29日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月30日| 下北沢にある魚や居酒屋とぶさかなの新着情報1月31日| 下北沢の魚や居酒屋新着情報2月1日| 下北沢の魚や居酒屋新着情報2月2日| 下北沢の魚や居酒屋新着情報2月3日| 下北沢の魚や居酒屋新着情報2月4日| 下北沢の魚や2月5日| 下北沢の魚や2月6日| 下北沢の魚や2月7日| 下北沢2月8日| 下北沢2月9日| 下北沢2月10日| 下北沢2月11日| 下北沢2月12日| 下北沢2月13日| 下北沢2月14日|